『薬屋のひとりごと』は、日向夏による大人気ライトノベルを原作とした作品で、2023年のアニメ化によりさらに注目を集めています。しかし、原作小説以外にも、本作には「漫画版」が2種類存在することをご存じでしょうか?
この記事では、その2つの漫画版――**スクウェア・エニックス版(以下、SE版)と小学館版(以下、小学館版)**を、それぞれの特徴や作画、構成、ストーリーテンポなどの観点から徹底比較します。どちらを読むべきか迷っている方の参考になれば幸いです。
1. それぞれの基本情報
■ スクウェア・エニックス版(SE版)
- 作画:ねこクラゲ
- 構成:七緒一綺
- 原作:日向夏
- 掲載誌:『月刊ビッグガンガン』
- 開始年:2017年
- 単行本既刊:15巻以上(2025年5月時点)
■ 小学館版
- 作画:倉田三ノ路
- 原作:日向夏
- 掲載誌:『サンデーGX』
- 開始年:2017年
- 単行本既刊:17巻以上(2025年5月時点)
2. 画風とキャラクターデザインの違い
■ SE版:華やかで柔らかい絵柄
ねこクラゲによる作画は、全体的に柔らかく、現代的なアニメ風のタッチです。後宮の華やかさや、登場人物の美しさが強調されており、キャラの魅力がビジュアル面で際立っています。特に壬氏(ジンシ)の美貌は、この作品で最大級のインパクトを持つ部分であり、SE版ではそれが強調されています。
猫猫(マオマオ)の表情も多彩で、ギャグシーンとシリアスな場面の切り替えがスムーズ。ライトな読者にも受け入れやすいビジュアルになっています。
■ 小学館版:硬派で写実的な絵柄
倉田三ノ路による作画は、より写実的でシリアスな雰囲気。陰影がしっかりしており、背景や衣装の描き込みも丁寧で、時代考証を感じさせる絵作りが特徴です。
猫猫の性格の棘や、薬師としての職人気質がよりリアルに伝わってくる印象で、より重厚なドラマを楽しみたい読者におすすめです。登場人物の表情も控えめで、感情を読み取る楽しさがあります。
3. ストーリー構成と進行速度
■ SE版:テンポよく読みやすい
SE版は、物語のテンポが非常に良く、テンションも比較的明るめ。ギャグシーンが適度に入り、事件解決のミステリー要素もスムーズに描かれています。新規読者にも親しみやすく、アニメと並行して読むにも適した構成です。
ストーリーの改変は少なめですが、演出上のアレンジやキャラ同士の会話の補足が入り、わかりやすさを重視しています。
■ 小学館版:忠実かつ重厚な描写
小学館版は、原作小説により忠実で、事件や人物の背景が丁寧に描かれる傾向があります。そのため、進行速度はややゆっくりに感じるかもしれませんが、読み応えがあります。
ミステリーの核心や人物の動機に対する描写が濃く、「読み込む」楽しさがある漫画です。原作のファンや、ミステリーの筋をじっくり追いたい人には特におすすめ。
4. キャラクターの描き方・印象の違い
- 猫猫(マオマオ)
SE版:ちょっとオタク気質で明るく、感情が見えやすいタイプ。
小学館版:クールで内向的、職人肌でやや冷たい印象も。 - 壬氏(ジンシ)
SE版:少女漫画的イケメン描写が強調され、ツンデレ要素も多め。
小学館版:ミステリアスで威圧感のある描写が目立ち、政治的な裏面が強調される。
5. どちらを読むべきか?おすすめの選び方
読者タイプ | おすすめの漫画版 |
---|---|
アニメ風の絵柄が好き | SE版 |
軽快なテンポで読みたい | SE版 |
原作の雰囲気を忠実に追いたい | 小学館版 |
ミステリーや宮廷劇の重厚感を楽しみたい | 小学館版 |
両方の良さを知りたい | 両方読むのがベスト! |
どちらも優れた作品であることに間違いありません。迷ったら、まず1巻ずつ試してみるのも良いでしょう。
6. 最後に
『薬屋のひとりごと』は、原作・アニメ・漫画とメディアごとに異なる魅力を持つ稀有な作品です。漫画版も、2種類あるからこそ、それぞれの視点や演出の違いを楽しめるのが魅力です。
SE版と小学館版、どちらが「正解」かではなく、それぞれが別の視点で同じ物語を語っていると思えば、どちらも読む価値は十分にあります。猫猫と壬氏の関係性、後宮の謎、薬学の知識――多層的な楽しみが味わえる『薬屋のひとりごと』の世界を、あなたもぜひ漫画版で堪能してみてください。
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